ジェフ・ジャービスのプライバシー 1


ジェフ・ジャービスの著作、「PUBLIC 開かれたネットの価値を最大化せよ」は、パブリックをテーマにしているけれど、内容を読むとプライバシーについて、とても丁寧に調べて考察しているのが分かります。彼は「メディア」「ジャーナリズム」「テクノロジー」「ビジネス」について積極的に発言を繰り返しているジャーナリストです。


ジェフ・ジャービスのブログ


この著作で彼は「プライバシー」を様々な角度で考察して、最後に「倫理であると信じるようになった」と結論します。そしてそれは「知る倫理」である、と言っています。どういう事でしょうか。まず彼は情報主体者という望遠鏡の反対側からプライバシーを見るのをやめて、情報を手に入れる側から見てみよう、と言います。


プライバシーは情報主体者側からどうしても考えてしまいます。これは「プライバシーとは何か」を突き詰めていく事となるし、これを説明するには出来なくはないかもしれないけれど、複雑なマトリクス上に定義が並んでいき、とても意味のあるモノに出来そうもない。ただプライバシーに関する今までの経験は、プライバシーは大事である、という事は告げている。ならば一歩進んで、「誰が」「どう守るのか」を考えていこうと。

僕ら(情報発信者) → 情報にアクセスできる人、企業、組織
僕ら(情報発信者) ← 情報にアクセスできる人、企業、組織


そして問題は、彼らが手に入れた情報で何をするかだとして。そこに倫理的な選択や、責任が生まれるのだと解説します。実は先日発表されたアメリカの「プライバシー権利章典」もこの「知る倫理」の立場で書かれています。


AがBにプライバシーを語る。Bはそれをどう使うか選択する事になる。Cにその話をする時、BはAを陥れたり何らかの自分の利益のためにそうするのか、Aの事が心配で助けるためにそうするのか、倫理的な問いを自分にする必要がある。と言います。

プライバシーは先に確認したように、名誉棄損や窃盗の被害を生む情報です。つまりプライバシーは、「知る事によって倫理と責任を問われる情報」である、と考える事が出来ます。特に現在のネットサービスを考える時、プライバシーに対するこの考え方はしっくりきます。その事を彼は「プライバシーは知る倫理である」という言葉で表しているのです。


ジェフ・ジャービスは、プライバシーの倫理を「知る倫理」という立場から試そうと思う、と言いながら倫理をまとめていきます。


「情報を盗まない」
・得るために嘘をついてはいけない
・勝手にのぞき見てはいけない
・騙して得てはいけない
・主体者に対し得る事をオープンにしなければいけない

企業が「人、モノ、カネ、情報」を資産にするのと同じように、個人にとって自分の情報は資産です。であれば「情報」を「お金」に変えてみれば上の倫理は正しいと言っていいように思えます。


「何をするのか明確にする」
・意図を明らかにする
・透明性を確保する

この事はインフォームド・コンセントを意味のあるものにして、トラストを得る条件となるものです。


「情報を守る」
・盗難されない
・流出されない

これもトラストを得るために、約束するべきです。星社会である今後の情報セキュリティはプライバシーを抜きには出来ないはずです。プライバシーのない情報セキュリティは「知る倫理を問わないセキュリティ」を定義してしまうからです。プライバシーは知る立場で考える必要があるのだから、サービスを提供する企業が問われる倫理です。それを守るためにセキュリティが必要である、という視点が必要とならざるおえないのではないかと考えています。