ダヴィンチという発信者
宇宙の法則、
自然の法則、
生命の法則と言った人間が存在する場所を、
彼は描く技術と共に、
絵画という情報に閉じ込めた。
絵を前にして、
そして「順番に進んでください」というアナウンスを無視して、
ずいぶん長いこと眺めていたと思う。
感動とともに僕を襲っていたのは不安だった。
以前同じ不安を感じた事があった。
アトランタのミッドタウンのはずれ。
四方に地平線が見える乾いた土地。
その中で得も知れぬ不安に襲われる。
そこにいるのは二十歳の僕だ。
自然の力なんだと思う。
自分の位置を思い知らされる瞬間に感じる、
不安とか恐怖とか言った類のその感情を、
「ダヴィンチ」は表現していた。
展示会では、
電子データが用意されていて、
そのデータを使って絵を拡大して見るコーナーがあった。
情報は再編集されていく。
電子データとして取り込まれた「受胎告知」という情報は、
絵といったい何がどれほど違うのだろうか。
うかつにも僕はそのデータを見てまた感動を覚えた。
しかし、
そこから懐かしい不安や恐怖を感じる事はなかった。