アラン・ウェスティンのプライバシー


ジャパンプライバシーセンターのアラン・ウェスティンは「プライバシーとは何か?」を考える時に最も参考になる活動を行っている一人です。プライバシーをあくまでも自分個人として考えるならば、彼のたてわける「距離感」を一番参考にします。しかし星化する社会で最も有効だと思うのは、「プライバシーの3種類」です。


プライバシーの3種類
・インフォメーションプライバシー
・ライフスタイルプライバシー
・シティズンプライバシー

話題となっている問題の多くはこの3つの角度で眺めてみると考えやすくなるのが分かります。

<インフォメーション プライバシー>
企業や、政府機関などによる、個人情報の取り扱いに関連するプライバシー。
企業の活動にとって消費者、従業員、株主、取引先担当者などの個人情報の収集や使用に関わるものであり、重要なプライバシーである。また、公共機関の保有情報については、情報を公開することによる社会的な利益と、非公開とするべきことのバランスも重要な課題である。


現在「個人情報」という言葉が持っているパワーはここに一番注がれています。インフォメーションプライバシーの責任は、その多くを企業が担っています。個人情報保護法は企業が個人情報を扱う場合に守るべき事が定められていて、この企業の責任についてイーライ・パリサーは次のように言っています。


「個人情報を個人資産だと考え、その権利を守る必要がある」


個人情報は自分でまもらなきゃ、と僕らは考えるし、その通り企業を監視する力をつけていく必要はあるでしょう。しかしサイバー空間での消費者は、目の前にサービス提供者がいないだけで、最初から分が悪い世界となっています。何か不利益があった時にその場で直接苦情や文句を言う事が出来ないのですから。

<ライフスタイル プライバシー>
日常生活や人生における個人の選択に関わるプライバシー。
生活環境や社会から制約を受けたり、個人の自立的な問題として社会の規範・倫理や慣習とのバランスが問題になることもある。


今、最も熱いプライバシーです。Googleの検索やAmazonのお薦め図書など、「パーソナライゼーションサービス」は僕らのライフスタイルの問題です。余計な情報を排除していくれる力を持っているとともに、気が付いたらそのサービスによってライフスタイルを決めらている、という事態になりかねません。


ライフスタイル情報は幾つかのデータを紐つける事によって個人を特定する個人情報となる可能性もあります。GPSはもちろん行動範囲を示すデータや、現在位置を知らせるデータなどもそこに含まれてきます。

<シティズン プライバシー>
社会生活を営む個人と、政府などの公権力との関係に関わるプライバシー。
憲法に規定された権利と義務、司法や政府の政策、警察権や安全保障、福祉政策実施に必要な情報と、個人の関係などである。


マイナンバー議論がおこってます。今後国が警察、安全保障以外にどこまで責任をおうか分かりませんが、先日Googleのサービス統合に伴い総務省が意見を通知したのは、国民のシティズンプライバシーを尊重するという、歴史に残る事だったというのも大げさじゃないと感じています。


イギリスやアメリカにならっていく事を考えるなら、衛星データでの監視や、今後は街中に監視カメラが設置されていく事にもなるのでしょうか。国はその目的を明確にして、国民の安全を守っていく必要があります。


こう見るとウェンスティンの立てわけたプライバイシーの3種類は、今おかれている状況を判断するのに、かなり有効なのが分かります。いよいよ国民レベルで「星」というノードの下に国が置かれる事となり、国、企業、個人の責任を合理化の作業のもと、明確にしていかないといけない時期に思えます。


ウェスティンはプライバシー問題で最も恐ろしいものに関してこう言っています。

物理的、または心理的な手段で究極の秘密を知られる事だ。この侵入は人を嘲りと辱めに対して無防備な状態にし、その秘密を知る者の支配下におく


ビックブラザーに対する懸念は消える事はないにしても、感情的な恐れにつながる「プライバシーとは何か」というテーマにあまり閉じこもるべきではなくて、合理化を目指す時期なのだからコンセンサスを取れる範囲の中で「プライバシーは誰がまもるか」を考えるべきでしょう。その責任の範囲をウェスティンは提示してくれています。


※ 参考図書、リンク 
「閉じこもるインターネット」 イーライパリサー
ジャパンプライバシーセンター