プライバシー OECDの勧告3


OECDガイドラインまでの道のりはそれほど簡単ではありません。60年にプロッサーがプライバシーの侵害行為について分類した「四類型」から、ガイドラインが採択された80年まで、この間20年。1960年〜1980年の間におこっていた事。ここを細かく正確に把握することは出来ないにしても、簡単にでもおさえておくことは、今後の各国のアイデンティティを理解する上で大事であると考えられます。今後は全体を見渡す時に各省庁や各自治体というレベルに加えて、「各国」という認識を消費者として持っていく必要があると思うからです。


岡村先生と新保先生の共著「電子ネットワークと個人情報保護」は現在もっとも参考にさせてもらっている一冊です。星社会における各国の対応を「個人情報保護」と「通信の秘密」などの観点から国ごとに紹介してくれています。とても圧倒的な内容となっているので、現在のプライバシーについて学びたい人にはお勧めしておきます。その本の中で「国際的なガイドラインが求められた背景について以下のように書かれています。

コンピュータによる大量の個人情報の処理が行われるようになり、それらの自由な流通を確保しつつ適切な保護が必要とされたことと、各国の法制度の整合性が求められていたことがあげられる。


ここに「各国の法制度の整合性が求められていた」と書かれている通り、80年のガイドライン前に各国は既に個人情報への対応をはじめていました。中でもドイツのヘッセン州では1969年に世界ではじめての個人情報保護法が制定されています。1969年というとARPANET」が誕生した年です。ドイツのいち州が世界初の制定をした背景は改めて調べてみたいところです。


その時の技術的、また国家的な背景としては、コンピュータが大量のデータ処理を行えるようになってきたことと、ファシズムへの市民社会的反省があったであろうこと、この時点ではまだネットワークへの関心はほとんどなかったはずだけれど、国勢調査の内容やデータの取り扱いに対して、一般的人格権から考えられるプライバシーを守らなければいけない、という社会的な意思が強くなっていたのだろうと想像されます。国家が市民をどう管理するのか。市民が国家を管理しようとしているような、何か強い意思を感じます。私的領域を想像する時にドイツは参考になる国なのではないでしょうか。


70年に入り欧州各国が個人情報保護に対してどんどん積極的になっていきます。スウェーデン、国としてドイツ、フランス、オーストリアデンマークなどなど。アメリカでも74年に「プライバシー法」、78年には「金融プライバシー権法」が制定されました。


さらに経済活動を中心としたグローバル化は、個人情報の流通を促進していました。各国事情による規制や法では対応できなくなるといった、そういった状況を踏まえて、OECDの80年ガイドラインが登場することになりました。


※参考==============================

電子ネットワークと個人情報保護―オンラインプライバシー法入門 岡村久道 新保史生 (共著) 経済産業調査会 (2002/10)