プライバシーの誕生と情報技術6


○1974年

クルド族の反乱(イラク
・第二次キプロス紛争(トルコ)
エチオピアでクーデター
ポルトガル無血クーデター
・「半導体及びトランジスタに関する研究」西沢潤一
・SNA(システムネットワークアーキテクチャ)開発(IBM
・プライバシー法案可決(米)
・デジタルリサーチ設立(米)
・「ゴッドファーザーⅡ」コッポラ
・プライバシーに関する国内評議委員会設置(米)


○1975年

コモロアンゴラ独立
・「アポロ」と「ソユーズ」のドッキング(米ソ)
ビルゲイツインテル(i8080)用に「BASIC」を書く!!!
ICカード発明(ローランモレノ(仏))
・「進化の倫理」J.メナード
・「フラクタルなオブジェ・形・偶然・次元」(米)
・ナイジェリアで無血クーデター
・公衆パケット交換網「TRANSPAC」建設決定(仏)
最高裁で「コピーも文書」の判断(日)
・ATM54銀行で現金自動化
マイクロソフト設立
・モンティパイソンBBCでヒット


○1976年

文化大革命収束
ロッキード事件
・衛星電波の家庭用受信設備開始(NHK総合技研)
・8ビットパソコン「Apple-Ⅱ」発売。スティーブ・ジョブズ
・国産初のマイコン「TK-80」日本電気
・コンピュータで4色問題を証明(ハーケン/アベル
・通信自由化(専用回線再販売・共同使用制約撤廃)(米)
・テレテキスト(初の電子雑誌)開始(英)
OECD多国籍企業と国家政策のガイドライン」発表
・情報公開法制定(米)
・アップル設立
・軍事クーデター「血の水曜日」(タイ)


○1977年

気象衛星「ひまわり」(日)
・世界初の超LSI開発「超LSI組合」(日)
光ファイバ製造に成功(電電公社茨城研)
光ファイバ通信用長波長帯半導体レーザ開発(KDD
・「スターウォーズ」ルーカス
・「未知との遭遇スピルバーグ
・デジタルシーケンサー「MC8」発売(ローランド)
・世界無線通信主管庁会議(放送衛星業務の国際的調整)


○1978年

日中友好平和条約
ソロモン諸島独立
・アラブ12カ国首脳会議
試験管ベビー誕生
・16ビット「i8086」発売(インテル
・JAPIO(日本特許情報機構)、データベースサービスの開始
・日米間でファクシミリ通信開始
・成田新国際空港、開港
・「生命=偶然をこえるもの」W.H.ソープ
・「LISPの構造」J.アレン
・「情報エントロピー」O.E.クラップ
スペースインベーダータイトー


○1979年

アフガニスタン民主共和国
・イラン‐イスラム共和国
・移民を白人に制限する白豪主義を撤廃(オーストラリア)
・東京サミット
スリーマイル島原発事故
ボイジャー1号木星輪、イオの火山活動撮影
・ダイナミックRAM試作(IBM)
・「PC-8001」発売(NEC)初の人気パソコン
光ファイバー大容量伝送成功(電電公社
・「コンピュータは考える」(P.マコーダック)
・「広告批評」創刊


○1980年

・イラン=イラク戦争
ジンバブエ独立
光州事件
・CD(コンパクトディスク)登場(ソニー、フィリップス)
・ユーロネット稼働開始
・LAN「Ethernet]登場(ゼロックス、DEC、インテル
OECD「国境を超えたデータフローに関するガイドライン」発表
・「ミルプラトー」(ドゥルーズガタリ
・「第三の波」(A.トフラー)

プライバシーの誕生と情報技術5


○1967年 日本情報元年

この年は日本に「情報産業研究部会」が発足し、この事から「情報元年」と呼ばれています。

第三次中東戦争
・ビアフラ戦争
ベトナム反戦運動が広がる
 → 「枯葉作戦」を開始。
ハイパーテキスト誕生(テッドネルソン)
・日本で情報産業研究部会発足
 → このことにより1967年は日本にとって「情報元年」とよばれる
世界知的所有権機関WIPO)設立
・「ブラックホール特異点」(ホーキング)
・「声と現象」「グラマトロジーについて」(ジャックデリダ
・JCB、日本初の国際クレジットカード発行
・大阪・阪急千里駅に自動改札機の第1号が設置
・日刊アルバイトニュース創刊(学生援護会
寺山修司主宰の「天井桟敷」旗揚げ
・金星に軟着陸(ソ)
・世界初の心臓移植手術(南ア)
・宇宙船ソユーズ1号が着陸に失敗。史上初の宇宙飛行による死亡事故(ソ)
ブリュッセル条約発効(欧)
東急百貨店本店が開店
ASEAN結成(東南アジア諸国連合
・アポリジニーに公民権が認められる(オーストラリア)
・ヨーロッパ共同体(EC)発足
・パーソナルコンピュータ登場(アラン・ケイ


○1968年 星社会元年

国境を超えた情報の編集作業がスタートします。

・「2001年宇宙の旅キューブリック
・「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」ディック
・「ホールアース・カタログ」スチュアートブラント
・論文「情報科学とは?」H.ボルコ
・ローマクラブ(民間国際的研究機関)設立
キング牧師暗殺
ケネディ暗殺
・貧者の行進
・3億円強奪事件(日)
プルトニウム国産化原子力研究所)
・郵便番号制度開始(日)
・5月危機(仏)


○1969年

レバノン紛争
チェコスロバキアの連邦制が発足する
市場経済導入(ハンガリー
・公害白書(日)
アポロ11号月面着陸
・マイクロプロセッサ登場(マーシャルテッドコフ【インテル】)
国防省ARPA-NET稼働(米)
・パケット交換技術発表(米国防省
・家庭用VTR ソニー(ベータ)と松下電器(VHS)の対決へ
・論文「情報科学教育」R.M.ヘイズ
・「アイデンティティ」エリク・H・エリクソン
・「断絶の時代」ピーター・ドラッカー
・「知の考古学」ミシェル・フーコー
・「世界劇場」フランシス・イエイツ


○1970年

・米ソ戦略兵器制限交渉(SALT.1)
ポーランド暴動
・「偶然と必然」ジャック・モノー
三島由紀夫割腹自決
・「すばる」創刊
ソニー、ニューヨーク上場
・カラー複写機6500発表(ゼロックス
・液晶LSI開発(シャープ)
・ビデオディスク開発(TED:西ドイツ)
・論文「リレーショナルデータベースの概念」E.F.コッド


○1971年

・中国、国連に加盟
沖縄返還協定が調印
アラブ首長国連邦成立
・ドルショック(ニクソンショック
・マイクロプロセッサ「i4001(4ビット)」発売(ノイス設計)
・最初のマイコン「アルト1号」試作(パロアルト研)
ARPANET稼働
・「脳の言語学」カール・プリブラ
・「人口知能」N.ニルソン
・「時計仕掛けのオレンジ」キューブリック
カップヌードル発売(日清食品


○1972年
日中国交正常化
・セイロンから「スリランカ」誕生
南北朝鮮声明
・マルコス大統領、戒厳令布告
・フローピーディスク登場(IBM
・IBM370に仮想記憶方式導入
・8ビットマイクロプロセッサ「8008」(米)
・「PROLOG」誕生(A.コルメラワー)
ファクシミリ低速機、国際規格制定
ISDNとIDNの概念の登場(CCITT)
・「成長の限界」ローマクラブ
・「エネルギー危機」チェース・マンハッタン銀行
・「アンチオイディプスドゥルーズ=ガタリ


○1973年

ベトナム和平協定
第四次中東戦争
・イギリスがECに正式加入
東西ドイツ、国連加入
・カリブ共同体(CARICOM)結成
・マイクロプロセッサ8080日本発売
オイルショック
・「テクストの快楽」ロラン・バルト
・渋谷パルコ

プライバシーの誕生と情報技術4


60年代以降は1年毎に見ていきます。とにかく50年代以降の世界史は、国の独立や人権、人民運動、内戦、戦争と世界は劇的に「公」「市民社会」「私」のバランスが変化していきます。国と国がケンカし、国と市民がケンカし、市民と市民がケンカする歴史となっています。そういった中で、星社会も誕生、育っていくことになっています。


星社会の誕生には視野が宇宙に広がったことがあげられます。ガガーリンが「地球は青かった」と言った時、国境とは何かを考えた人が、沢山現れたんじゃないでしょうか。映画ではキューブリックが「2001年宇宙の旅」を発表し、文化的に宇宙的な視野を表現します。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」をディックが出し、「ホールアースカタログ」をスチュアートブラントが創設する。スポーツではオリンピック参加国が一気に増えていき、絵画、舞踊などの世界でも国境を超えたアーティスト達が活躍をし始める。ロック、ポップスが登場、レコードが広く国を超えて聞かれるようなってくる。


○1961年

東ドイツによるベルリン封鎖ベルリンの壁
・韓国クーデター(5・16軍事クーデター)
・有人宇宙船ウォストーク地球周回成功
 「地球は青かった」(ガガーリン
・APT誕生(数値制御用プログラム言語)
・「情報科学」という用語がはじめて使用される(ジョージア工科大学)
・「狂気の歴史」ミシェル・フーコー
・「宴のあと」起訴事件
南アフリカ連邦イギリス連邦を脱退、南アフリカ共和国となる。
・(米)フェアチャイルド IC(集積回路)を販売開始
・アフリカ憲章発表(ガーナ、ギニア、マリ、モロッコ、アラブ連合)
アンゴラ解放人民戦線
キューバ統一党を結成(カストロ
クルド族蜂起(イラク


○1962年

・SIMULA誕生(シミュレーション言語)
シミュレーションゲーム制作(MIT)
通信衛星テルスター
X線天体の発見(リカルド・ジャコーニ等)
・「資本主義と自由」フリードマン
ウォーホールシルクスクリーン作品 → マリリンモンローやコカコーラ
ビートルズ登場
アルジェリア独立
キューバ危機
・「社会主義における階級闘争」(毛沢東


○1963年

ケネディ暗殺
日本原子力発電に成功
・CTSS、タイムシェアリングシステム開発(MIT)
・日本で初となるデータ伝送サービス開始
・米ソに回線ホットライン
・基礎科学に「情報」を採用(米)
・「理論と実践」ハーバマス
・イラン白色革命
・新アラブ連合結成(エジプト、シリア、イラク
キプロス紛争
ケニア独立


○1964年

公民権運動(米)
・電子卓上計算機の登場(早川電気、ソニー
三井銀行でオンラインシステム採用
・INTELSATの設立(国際電気通信衛星機構)
東海道新幹線営業開始
日本航空、座席予約システム開始
・男女平等法(米)
クオーク理論登場(ゲルマン/ツヴァイク
・「代数多様体特異点還元」証明(広中平祐
・「シナプスの生理学」エクルズ
・ヒッピーカルチャーが広がる
・アフロアメリカン統一機構設立(マルコムX
公民権法成立(米)


○1965年

日韓条約
シンガポール独立
ベトナムで北爆開始
・スタティックRAM論文(シュミット)
・DECからミニコン、PDP8型発表
・日本、赤字国債の発行スタート
・遺伝暗号の解読に成果(ニーレンバーグ等)
・「言語にとって美とはなにか」吉本隆明
ローデシア問題勃発
消費者運動の高まり(米消費者連盟)


○1966年

文化大革命
ベトナム派遣40万人(米)
・光学文字読みとり装置、OCR開発(IBM
・情報の自由に関する法律(FCIA)」制定(米)
松下電器、年功賃金から職能別賃金へ
・「プロクセミックス」エドワード・ホール
・「巨人の星」連載開始
・「ウルトラマン」TV放送開始(日)
・「バットマン」TV放送開始(米)
・人民連帯会議(アジア、アフリカ、ラテンアメリカで100カ国参加)
 → キューバ
ガンジー、インド大統領就任
ボツワナ共和国の誕生
カンボジア第一次内閣成立(ロン・ノル

プライバシーの誕生と情報技術3


OECDの8原則が登場した背景や中身はもう少し確認しておきたいので、まとめていきます。
1950年から1980年までの背景を、また自分の記憶とWikiPedea等の情報と、松岡正剛氏の「情報の歴史」からおおよそ年代順になるようにメモしています。まずは1950年代。


コンピュータ技術が一気に加速していきます。中でもコンピュータ言語として「COBOL」や「LISP」が誕生し、磁気ディスク装置(HD)に情報が保存されるようになりました。
一般的には音楽産業(レコード文化)の発展、ベケット、安部工房、三島由紀夫の文学界、アメリカ南部での人権運動、ゴダールフェリーニ小津安二郎黒澤明等の映画文化。人工衛星の打ち上げ、さらにはシリコンバレーのガレージベンチャーがスタートしていくこととなります。後は日本で「国民健康法」が公布されたのは覆えておきたいですね。


○1950年代初頭〜

・「人間機械論」 ノーバート・ウィーナー
・パリ条約
・日本初の民間放送ラジオ局、中部日本放送新日本放送(現・毎日放送)が開局。
・米で原子力発電に成功
・UNIVAC用インタープリタの登場
日本航空設立
・日本電電公社発足
・IBM701(科学用大型コンピュータ)
・日本のアマチュア無線が再開
全日空設立
・「4分43秒」ジョンケージ
鉄腕アトム
・日本IMFに加盟
・「DNAの構造」で二重螺旋モデルを提唱。ジェームズ・ワトソン/フランシス・クリック
・TVガイドの登場
国際電信電話株式会社KDD)設立
・「レム睡眠の発見」(ユージン・アセリンスキー/ナサニエル・クライトマン
太陽電池の発明(ベル研)
半導体工場の設立(ショックレイによりバオアルトに)
・ 旅客機、ボーイング707型機が初飛行。
・「七人の侍黒澤明監督
キング牧師指導の人権運動(バスボイコット運動)
トランジスタラジオ発売(東京通信工業
富士通ラインプリンタの開発
・東京、大阪間でテレックスサービス開始
・「米ディズニーランド」オープン
・ 「広辞苑初版発行」(岩波書店
中東戦争
・RAMACがFORTRANを発表
・「オートマトンの研究」シャノン、マッカーシー
・「週刊新潮」創刊
・黒人選挙権保障(米)
スプートニク1号、2号打ち上げ成功
・コンピュータグラフィックによりボーイング737が設計される
・「同一性と差異」ハイデッガー
「点と線」松本清張
モータウンレコード設立
・「電話線を利用したデータ通信」(米)
・ガレージベンチャーの登場(シリコンバレー
NASA航空宇宙局設置
・磁気ディスク装置実用化(IBM305)
国民健康保険法公布(日)
ソニー設立
ホログラフィーの発明(デニス・ガボール
・第二世代コンピュータ(IBM1401)
・京セラ設立
・「勝手にしやがれゴダール
・「モハメンド・スピークス」創刊(マルコムX
・フランス核実験
・韓国四月革命
COBOL誕生
LISP誕生
・「鉄人28号横山光輝


※注意とお願い
情報の中身に関しては勘違いや間違い等あるかもしれませんので、それぞれ確認願います。
気にあるものがあれば指摘、修正していただけるとありがたいです。

プライバシー OECDの勧告3


OECDガイドラインまでの道のりはそれほど簡単ではありません。60年にプロッサーがプライバシーの侵害行為について分類した「四類型」から、ガイドラインが採択された80年まで、この間20年。1960年〜1980年の間におこっていた事。ここを細かく正確に把握することは出来ないにしても、簡単にでもおさえておくことは、今後の各国のアイデンティティを理解する上で大事であると考えられます。今後は全体を見渡す時に各省庁や各自治体というレベルに加えて、「各国」という認識を消費者として持っていく必要があると思うからです。


岡村先生と新保先生の共著「電子ネットワークと個人情報保護」は現在もっとも参考にさせてもらっている一冊です。星社会における各国の対応を「個人情報保護」と「通信の秘密」などの観点から国ごとに紹介してくれています。とても圧倒的な内容となっているので、現在のプライバシーについて学びたい人にはお勧めしておきます。その本の中で「国際的なガイドラインが求められた背景について以下のように書かれています。

コンピュータによる大量の個人情報の処理が行われるようになり、それらの自由な流通を確保しつつ適切な保護が必要とされたことと、各国の法制度の整合性が求められていたことがあげられる。


ここに「各国の法制度の整合性が求められていた」と書かれている通り、80年のガイドライン前に各国は既に個人情報への対応をはじめていました。中でもドイツのヘッセン州では1969年に世界ではじめての個人情報保護法が制定されています。1969年というとARPANET」が誕生した年です。ドイツのいち州が世界初の制定をした背景は改めて調べてみたいところです。


その時の技術的、また国家的な背景としては、コンピュータが大量のデータ処理を行えるようになってきたことと、ファシズムへの市民社会的反省があったであろうこと、この時点ではまだネットワークへの関心はほとんどなかったはずだけれど、国勢調査の内容やデータの取り扱いに対して、一般的人格権から考えられるプライバシーを守らなければいけない、という社会的な意思が強くなっていたのだろうと想像されます。国家が市民をどう管理するのか。市民が国家を管理しようとしているような、何か強い意思を感じます。私的領域を想像する時にドイツは参考になる国なのではないでしょうか。


70年に入り欧州各国が個人情報保護に対してどんどん積極的になっていきます。スウェーデン、国としてドイツ、フランス、オーストリアデンマークなどなど。アメリカでも74年に「プライバシー法」、78年には「金融プライバシー権法」が制定されました。


さらに経済活動を中心としたグローバル化は、個人情報の流通を促進していました。各国事情による規制や法では対応できなくなるといった、そういった状況を踏まえて、OECDの80年ガイドラインが登場することになりました。


※参考==============================

電子ネットワークと個人情報保護―オンラインプライバシー法入門 岡村久道 新保史生 (共著) 経済産業調査会 (2002/10)

プライバシー OECDの勧告2


1960年以降に「コンピュータ」と「インターネット」の世界が登場しました。これは「デジタル」「End-to-End」の世界と言うことも出来ます。


コンピュータの原理は「0」と「1」だけを使用して世界を構築する、というものです。文字も画像も映像もその他のファイルもプログラムも、そしてプライバシー情報も。すべて「デジタル情報」という一つの共通形式で処理されています。


インターネットの原理はTCP/IPで、TCP「End-to-End」アーキテクチャを採用しています。「End-to-End」というのはインターネットはどんなデータがやり取りされようがその中身には感知していない、というものです。回線を通るデータがなんであれパケットという段ボールに入れて自由にコンピュータ間を渡り歩いていきます。画像なのか映像なのかなどは、送り手のコンピュータと、受け手のコンピュータが使用するソフトウェアに、その役割をまかせています。


この事はインターネットの自由性を広げていて、「End-to-End」であったからこそ、ケーブルの中では中身を一切気にしないやり方であったこそ、ここまで急速にインターネットは広まった、と言うことも出来ます。第八大陸や星社会と呼ばれる新たな生活空間は「デジタル」「End-to-End」を大地と空に持つ世界なのです。


その自由にデータをやり取りする世界では、プライバシー情報も例外ではありません。


情報通信技術がどのようなもので、この星社会がどのように成り立っているのか、この視点で「情報教育」の必要があるように考えてます。「デジタル」の意味と意義。「End-to-End」の意味と意義。プライバシー情報を扱うことでこの2つのアーキテクチャが果たしてきた、もしくは果たしてしまったこの状況を認識できるよう促していく。そうすることで「私的領域への挑戦」に参戦できるようになる。


次世代の日本のあり方に対して、たとえば東さんも「一般意思2.0」において、素晴らしい世界が来るとは言ってません。どちらかというと味気ない、無味乾燥の世界に向かっているのではないか、という悲哀をその文章ににじませているように思えます。しかしその著書を読んだ人はわかると思いますが、東さんは私的領域のことをほとんど語っていません。国家と市民社会はより実務的に、より合理的に人々の声を吸い上げ、様々な問題を処理していく、そんな世界が現れるのかもしれません。でもその世界で無味乾燥的に生きるのか、その中で新しい楽しさや優雅さを獲得していくのかは、個人それぞれの問題になっていく。


どんなに合理的になろうが、新しいことや楽しいことを求める気持ちがなくなる、なんて考えられません。「私的領域への挑戦」は、僕たち一人ひとりがまさに自分が主役の時代に生きる、ということでしょう。しかしいつの時代もこちらが無知のうちに構造を決めてしまおう、という流れがあります。自分が主役の時代が目の前にあるのに「プライバシーって何だよ?!」っていつまでも言ってるわけにはいきません。監視技術や追跡技術は、日々新たな監視・追跡社会へと全体を誘っています。


OECDガイドラインは30年前に作成されたものです。確認してみるとオプト・イン、オプト・アウトを含めてその内容は拘束力を持たないものの、各国に影響を与える価値を持っていたことがわかります。そして今、「忘れられる権利」や「追跡拒否」などが新たに欧米で追加されつつあるという流れが見えてきます。

プライバシー OECDの勧告


産業革命によって起こった変化は、イシェイが言うように「国家」市民社会そして「私的分野」のバランスを変えました。人々は外での活動範囲を広げて、またマスメディアの登場により話題を共有するようになり、文化の華が咲き日常に幅広いコミュニケーションの場が登場するようになりました。そこで「プライバシー」が問題となって浮上してきたことは、人間社会を考える上でとても興味深いことです。


そして1960年代に入り、今振り返ってみると産業革命以来の革命が、静かに、そして劇的におこっていたことになります。コンピュータとネットワークの登場がそれで、情報のすべてが「デジタル」という共通の記号によって置き換えられることになり、その情報はコミュニケーションの領域を惑星レベルに広げることになりました。文字のみならず、画像、音声、音楽、動画、プログラムなどが「デジタル」という同じ言語に置き換えられてしまった。このデジタルは「複製しやすい」という特徴があり、「モノ」という特徴を持った商品がその価値を失っていくことになりました。


そしてまた「国家」と「市民社会」、そして「私的分野」のバランスにゆがみが出ることになってきます。中でも私の生活にとって影響力が大きいのは画像や音声のみならず、自分のコピーがネットワークを通して惑星中のあちこちに出回るようになったことでしょう。いよいよ「デジタル」は音楽や動画のみならず、人間を飲み込むようになってきました。


自分の属性が、そして自分の生活がデジタル情報としてコピーされ、情報システム上に散らばっている。


「誰が」「何のために」その自分の情報を収集しているのかも理解しづらく、不安感でいっぱいになり、Webサービスをでき得る限り使用しない人がいるのもわかります。CDが売れなくなり音楽産業が変化を余儀なくされているのは昨今の話題の一つです。もしかすると人間も肉体をもった自分自身よりも、コピーされたデジタルの自分のほうが価値を持ち始めるのかもしれません。いや、既に情報システムはデジタルな個人に商業的な価値を見つけているのです。


自分の属性や自分の生活というまさに自分自身を表現する情報がデジタル情報としてコピーされ、インターネットの中にあふれている、と考えることはそれほど気持ちのいいものではありません。そんな中で1981年、経済協力開発機構 (OECD) が個人に関するデジタルデータを情報システムはどのように扱うべきなのか、という点について勧告をおこないました。これは世界的な指針として各国の「個人データ」を扱う法や規制に寄与しています。


プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関するOECD理事会勧告(総務省資料)


僕らがプライバシーという語彙を持っていないのではないか、というところからスタートしたプライバシーに関するこのブログねたですが、このOECDガイドラインのタイトルにある「プライバシー保護」と「個人データ」という2つの言葉を結びつけて理解していく必要がある現在です。